デザイン思考が世界を変える―イノベーションを導く新しい考え方
デザイン思考が世界を変える―イノベーションを導く新しい考え方 (ハヤカワ新書juice)
- 作者: ティムブラウン,Tim Brown,千葉敏生
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/04
- メディア: 単行本
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デザイン思考には初めて触れたけど、予想していたよりもビジネスライクな本であった。概念自体は割とスムーズに理解できて、その手法も事例ベースであるので非常に役に立つのだが、他の戦略思考との兼ね合いが自分の中で消化不良な感がある。他のビジネス思考体系の中でどこに位置するかと言う事だが。
memo
デザイン思考では、誰もが持ってはいるものの、従来の問題解決方法では軽視されてきた能力を利用する。デザイン思考は、人間中心であるというだけではなく、人間の本質そのものとも言える。直感で判断する能力。パターンを見分ける能力。機能性だけではなく感情的な価値をも持つアイデアを産み出す能力。単語や記号以外の媒体で自分自身を発信する能力。それを重視するのがデザイン思考だ。
IDEOには、「いかなる個人よりも全員の方が賢い」という有名な格言がある。
次世代のデザイナーは、スタジオや工房の中だけでなく、重役会議でも力を発揮できなければならない。そして、成人の非識字率から地球温暖化まで、あらゆる問題をデザインの問題としてとらえる習慣を身につける必要があるのだ。
「デザイン思考家」の仕事とは、人々が自分でさえ気付いてない内なるニーズを明らかにする手助けを行うことだ。そのためには、どのようなアプローチが必要か?漸進的で平凡な変化ではなく、地図を塗り替える飛躍的な発想を産み出すには、そのような手段が必要なのか?(中略)成功するデザイン・プロダクトの三つの要素に注目する。それは、互いに相乗効果を持つ「洞察」「観察」「共感」という三つの要素だ。
デザイン思考家は、「消費者に対する私達」であっても「消費者を代表する私達」であってもならない。「消費者と手を取る私達」でなければならないのだ。
デザインチームはプロジェクトの過程で重なり合う三つの空間を行き来する心構えを持つべきだ。考えうるありとあらゆる情報源から洞察を収集する「着想」という空間。その洞察をアイデアに置き換える「発案」という空間。最善のアイデアから具体的で緻密な行動計画を産み出す「実現」という空間。これらは、厳格な方法論に従った手順と言うよりも、重なり合う「空間」と言える。
プロトタイプには、役立つフィードバックを得てアイデアを前進させるのに必要な時間、労力、投資だけをかけるようにするべきだ。プロトタイプが複雑で高額になるほど、「完成品」に近付いてしまい、制作者は建設的なフィードバックが得られないばかりか、フィードバックに耳を貸そうとさえしなくなる。
多くの場合、私達は物語を通じてアイデアに文脈や意味を与える。したがって、本質的に人間中心の問題解決アプローチである「デザイン思考」において、人間の物語の能力が重要な役割を果たすのはまったく不思議ではない。
重要なのは、創造的プロセスから魂を抜き取らないようにすることだ。つまり、経営陣が当然の如く求める安定性、生産性、予測可能性と、デザイン思考家が求める自発性、偶発性、実験性のバランスを取ると言う事だ。
ある意味では、全ての製品が既にサービスの一面を備えている。どんなに無機質に見えても、製品はすでにその裏側でブランドとの繋がりを持っているし、購入後の保守、修理、改良を期待させる。同じように、乗客を大陸の反対側へ運ぶ飛行機の座席であれ、人々とテレコミュニケーション・サービスの広大なネットワークを結びつけるブラックベリーであれ、たいていのサービスは何らかの実態を伴う。製品とサービスの境界はぶれはじめているのだ。
「必要はイノベーションの母」なのだ。