投資銀行青春白書

投資銀行青春白書

投資銀行青春白書

残酷日記のイメージがあったから同じような内容を想像していたら全然コミカルだった。あの本は心理描写が多いけど、こっちはストーリーに沿って業務の内容を簡単に説明していくような感じでほむほむ〜という感じであった。プロジェクトの進め方が中心になるのかなと思っていたら、意外と案件獲得までが話の中心であり、まあこの話は一部なんだろうけど、M&A案件の裏はなんかこんな人達が蠢いているのかと思うと新鮮である。

memo

「この提案書の目的は何?」「ハイ、冬の新商品キャンペーンの提案をしたいんです!……」「分かった。じゃあその話はちょっと置いておいてだ…。企業の目的はなんだ?」「うーん。売上を伸ばすことですよね?」「惜しい!でも違う。正解は、収益を上げて企業価値を上げること。簡単に言うと、株価を上げることだよ」

「なるほど。なかなか悪くは無いですよね。アメリカでのプレゼンスもさることながら、中南米でのプレゼンスというのは確かに魅力的ですよね」「はい、そう思います。以前からおうかがいしている海外戦略では、まずはアジア地域を優先と言うことでしたが、なかなか売り物も出てきません。一方で海外でのM&Aはドンドン進みますので、このコスメアーサーは選択肢としてはアリかと」

証券会社、特に外資証券会社の場合は部署毎の採算性が厳しくチェックされ、予算に達しない場合は人員削減にも繋がりかねない。したがって、投資銀行本部の利益を優先して、セールス部門やトレーディング部門が株を売らない、ということはない。

「それにこのグラフ、この目盛り線はいらないだろ?グラフの背景色も要らないし、この補助線も要らない。俺たちがこのグラフで強調したいデータはなんだ?それがこのグラフを見てキチンと一目で強調できているか?」「そもそも、ここ数日は全然やる気が無さそうだったけど、俺たちが汗水たらして何時間も掛けて一生懸命作ったプレゼンテーションを、フォントやグラフを一つ変えるだけでずっと印象が良くなるんだったら、どうしてそのたった一分の手間を惜しむ?」

「給料をカットしてでも、人減らしてでも利益は残す。そして株主に報いる。それが外資系証券界社の仕組みだよ。別に投資銀行に限ったことじゃなく、アメリカでは結構よくあることだ。」

ビューティコンテストになると、他の投資銀行よりも自分達がいかに優れていて、案件を成功させることが出来るかを、過去の実績、担当チームの詳細なメンバー紹介、そして、実際に案件を進める場合の提案内容などを100ページぐらいの分厚い資料にまとめて、クライアントにプレゼンテーションを行うことになる。投資銀行同士が自らの優秀さを競うと言う点が美人コンテストに似ているので、ビューティコンテストと呼ばれる。

「で、結婚なら最悪自分が困るだけだけど、企業の場合は地雷を踏むと倒産してしまう危険だってある。倒産すると、働いている社員が路頭に迷うし、お金を貸し出している銀行も困る。そして、取引先も売掛金が回収できず、株主も大損する。つまり、大勢の関係者がすごく困って、しかも、場合によっては日本経済全体に悪影響を及ぼす可能性だってある」

「うーん。メリー化粧品にとってはコスメアーサーは絶対に欲しい企業だからさ。安く買うのは勿論重要だけど、この会社が買収できない場合のリスクは非常に大きい」「それはそうですよね」「今後の成長戦略は狂うし、他の企業に取られるとますます競争が激しくなるからな。だからちょっと上の金額を提示して、確実に入札に勝つほうがいいかなと思って」