起業のファイナンス ベンチャーにとって一番大切なこと

起業のファイナンス ベンチャーにとって一番大切なこと

起業のファイナンス ベンチャーにとって一番大切なこと

読書メモ

  • ベンチャー企業の「生態系」を作り上げる事が必要
    • ベンチャー企業が活動する「生態系」全体に信用形成の道筋が出来上がってくると、ベンチャー企業が毎回「当社がなぜイケてるかというとですねー」と一から説明する必要も無くなり、説明コストも下がる訳です。
    • 信用できる第三者が「ありつらはすごい」と言ったり、その企業に投資をしていたりすれば、信用力は増すはずです。商売で最も重要なのは信用であり、ゼロからスタートするベンチャー企業は何より、「信用」を得る事が難しいのですから。
    • そういう「生態系」が育つ事で、起業がますます盛んになります。逆に、ベンチャー企業が増えないと、そういうことも起こらないのです。
  • ベンチャービジネスとは何か
    • 単に「自分で経営者として事業を行っている」だけでなく、「今までに比べてコストが何分の一にもなるサービス」とか「今までに無かったニーズの新製品」を売るなど、「イノベーション」を志向する企業を「ベンチャー企業」と呼ぶ事にしたいと思います。
  • 資本市場は「オープン」でないと成立しない
    • 資本市場から資金の供給を受けるというのはそう容易ではありません。資本市場というのは、企業と証券会社だけでなく、機関投資家個人投資家、社外役員、監査法人、弁護士、税理士、司法書士、格付機関などいろいろな参加者が集まって形成される生態系(エコシステム)なので、そうした参加者が全体として強調して1つの市場として機能するようになるのは、一朝一夕には難しいのです。
    • 「これからはベンチャー企業が活躍する時代に変化していく」という期待を広く形成させることこそが重要なのです。
  • ベンチャー企業が株式で資金調達をする理由
    • イノベーティブなことをやる場合に、銀行からの借入をあてにしてしまってはいけません。なぜ株式で資金調達するかと言うと、それはベンチャー企業のリスクが高いからです。
    • 例外を無視してあえて単純な言い方をすれば、ベンチャー企業はお金を「借りる」べきではありません。
    • ベンチャー企業が儲かるかどうか分からない段階で仮に誰かがお金を貸してくれたとしても、収入が不安定(またはない)中で、毎月必ず元利を返済しなければならないというのは非常にきついのです。
  • 上場とはどういうことか
    • 上場に関わるプレイヤー
    • 日本では「一刻も早く上場する」という傾向が強くなっています。日本では「上場企業」というブランドはまだ効果が大きい場合も多いので、上場する事によって、人・モノ・カネ・情報といった経営資源の調達力を一気に高められる可能性があります。
  • ベンチャー企業への投資
    • ベンチャーキャピタルが日本で投資をしている残高は2009年3月末時点で約9,500億円、1年間に投資される金額は1,366億円となっています。これに対して、2009年のアメリカで、未上場のベンチャー企業に出資された資金は178,782百万ドル(1ドル90円換算で1.6兆円)です。年によってバラツキはありますが、それでもやはり、アメリカのベンチャー企業への投資は日本の10倍ほどあるわけです。
    • イケてる企業から見れば、投資してもらえるお金は非常にありあまっているわけです。
    • つまり、日本に不足しているものはベンチャーのための「お金」ではありません。そのお金を受け取る「イケてるベンチャー企業」のほうな訳です。
  • 法人には「公私」を分ける機能がある
    • 「会社一度作ったら、それは公の器すなわち『公器』として考えなくてはならない。たとえ自分が株式の100%を持っていたとしても、それは『公』」のものなのだ」
  • 「アニマル・スピリッツ」と起業
    • 起業段階の経営者としては、「この事業がいかに面白いか」「このサービスは世界を変えると思う」といった、「事業の面白さ」をトウトウと語るタイプが向いているのではないかと思います。
  • 事業価値評価と法人化のタイミング
    • それでは、この法人化のタイミングがいつがいいのでしょうか?結論から言いますと、増資を受ける半年くらい前に法人にしておいた方が、余裕があるスケジュールを組めると思います。
  • 税務と法人化のタイミング
    • 法人化をするのは、まだ赤字かほとんど利益の出ていない段階で、ベンチャーキャピタルなどの投資家と増資の交渉が始まっていないような段階が望ましいわけです。
  • 「エンジェル」の性質と問題点
    • 創業者とその投資家が同じ普通株式で同時に出資するとしたら、創業者と投資家の出資する株価は同じでないとおかしいことになります。
    • この先、事業で数千万円の調達が必要だとしたら、その後の資金調達で創業者の持分は限りなくゼロに近付いてしまいます。
    • つまり、この企業は生まれた瞬間にすでに資本政策で失敗していた訳です。
    • 極力、余力をもって法人を設立し、知的財産権をその法人に蓄積していったり、ある程度の実績を積んだりして、企業価値が高いという根拠を積み上げてから外部の投資家に投資をしてもらうようにするのが、いいでしょう。
  • 「最初」が非常に重要
    • 日本では「本当は世界に通用するすごい事業のはずだったのに、このしょっぱなの資本政策の誤りで、その後の事業展開の芽が断たれた」と言ったケースは、表面化はしないけれど、物凄く多いのではないでしょうか。
    • 初期段階で取り返しのつかないミスをする可能性の高い環境は、大袈裟に言えば、日本のイノベーションを減らし、潜在成長率を下げている可能性もあるのではないかと思います。
  • 成功するベンチャーを「ソーシャルグラフ」から考える
    • 実際に事業というのは財務諸表に最終的に表示される「利益」を長期的にいかに大きくするか、という勝負になります。それは直接には、主として、「この会社で働こう」といった、人と人との取引関係(契約)の結果が反映されたものです。
    • そのためには、こうした「ソーシャルグラフ」、更に言えば「イケてるソーシャルグラフ」の中に上手く入り込めることが重要なのです。
  • 事業計画が何故必要か?
    • 「もしここで、期待する程の需要が得られなかったらどうする?」「もしここで、ライバルが参入してきたらどうする?」といような話を、色々頭の中であれこれシュミレーションする時に、事業計画はその叩き台に成ると思います。
    • 事業計画を作る事を通じて考えがまとまっていれば、説得力のある話をできる可能性が高まるということです。
  • センスだけでは経営は続かない
    • 創業期に「社長」になる人は、「技術や営業だけわかっていればOK」ではなくて、ある程度、「経営」や「数字」も分かっていないと長続きしない可能性が高いということです。
  • 事業計画書の構成
    • EXECUTIVE SUMMARY
    • 会社の概要
    • 外部環境
    • 数値計画(損益や資金などの計画)
    • 検討している資金調達の概要や資本政策
  • 帳簿価格と企業価値評価(純資産法)
    • 日本の場合は簡単に過半数を他人に渡す事を考えないほうがいいと思います。
    • 能力がさほどでもなく頭の固い経営者が、絶対的な議決権比率を持って外部の投資家の言う事を全く聞かない場合には、誰も得しない悲劇が発生してします。
    • 創業したばかりのベンチャー企業は「過去」財務的実績なんてほとんどないわけですから、そうしたベンチャー企業が「過去」で勝負したら負けなのです。
    • ベンチャー企業に価値は、過去の財務的な実績で見るのではなく、未来の可能性で見るべきだからです。
  • 投資家はEXITから逆算する
    • DCF法で見たように、「将来のビジネス規模」と「その実現の確実性」が鍵なのです。
  • 資本政策の重要性
    • 創業してこれから成長していこうというベンチャー企業にとって資本政策を考える事が重要なのは、資本政策の間違いは、初期の間違いほど、あとになってから修正が利かないからです。
    • 外部の投資家の出資を受けるという事は、その投資家が参加する事によって(またはその資金が今手に入る事によって)企業価値が高まるかどうかも重要なのです。
    • ベンチャーキャピタルがファンドの投資家から資金を集める際に、「Key man clause(キーマン条項)」といったものを定めて、特定のパートナーがファンドの運営からはずれることを禁止している場合があります。そういう場合に、そのパートナーが直接担当してくれているなら、その人が将来にわたってずっと担当してくれる可能性は高いと言えるでしょう。
  • アメリカの事例を鵜呑みにしない
    • アメリカは、他の会社を何者も経営してきた経験のある「プロの」経営者の層が非常に厚くなっています。日本でも複数の企業を渡り歩いたプロ経営者は増えてきてはいますが、まだ流動性は十分ではありません。つまり、日本の創業者は一度経営を始めたら、交代要員を探すのがアメリカより難しく、基本的には一生自分で経営に責任を負うつもりで起業する覚悟が必要でしょう。
  • ベンチャーにとって一番大切な事
    • ベンチャー企業とは、誰も分からない未来にチャレンジする企業のことです。そして、そのベンチャー企業が生まれるために最も大切であり、かつ、日本に一番不足している希少資源は、技術力でも、お金でもなく、「アニマル・スピリッツ」と、それを持ち合わせている「人」であるということを、繰り返し述べさせて頂きました。
    • 「日本のベンチャー投資のGDP比が他の世界各国と比較して非常に小さい」というのは事実ですが、現在、規制等によって、ベンチャー企業に資金が流れない構造になっているわけではありあません。必要なのは「水道管」ではなく、水を欲しがる需要、すなわち「ベンチャーをやってみようという(イケてる)ヤツら」の方なのです。