滅びゆく国家 日本はどこへ向かうのか

滅びゆく国家 日本はどこへ向かうのか

滅びゆく国家 日本はどこへ向かうのか


立花隆氏が日経BP社のウェブページで連載していたものを抜き出し、編集したもの。
ライブドアショック小泉改革など、当時のメディアに焦点を当てているため、内容は若干古めである。


ライブドアショック

  • 要するに、このスキームでは、リーマン・ブラザーズはどう転んでも必ず儲かるようになっているのである。誰が考えだしたのか知らないが、ほとんど天才的なスキームと言ってよいだろう。


天皇

  • もし、皇位が男子に限るという事が憲法に明記してあったら、女子を天皇につけるためには憲法改正が必要になってくる。しかし、現行憲法では男子女子か規定せず、その点に関しては、ただ、皇室典範によるという規定しかない現行法んぽ状態では女子の天皇をもつようにすることは法的にはさして難しいことではない。
  • 東大はそもそも、天皇のための大学だった。近代国家日本は、天王星という君主制の上に建てられた国家であり、東大は、そのような国家を支える人材育成のために作られた大学だった。
  • 大学にはもうひとつ仕える対象があったからである。それは何かというと、学問である。学問は真理の探求を目的としていたから、仕えていたのは真理に対してであったといってもよい。


靖国論・憲法

  • 中国の人民日報も、同じシュレーダー首相のブーヘンワルトでの演説を引き、ドイツの謝罪の歴史を詳しく報じている。先に引いた、西ドイツのブラント首相の70年の台詞、「こうすべきであったのにこうしなかったすべての人たちに代わってひざまずく」は、その人民日報に引用されている言葉だ。
  • 世界のメディアが小泉首相のその行動を報じるときに、必ず付け加える一語は、「『これは不戦の誓いだ』と小泉首相は言っています」のコメントではなく、「この神社には、日本のA級戦犯が祀られて神とされており、中国、韓国の激しい反発を招いています」とのコメントなのである。
  • 「・・・政府を代表する文官は誰も(靖国へ)行っていません。世界の主要国みな同じです。天皇ですら行かないようなところに誰が行きますか」


小泉改革の真実

  • 相手と直接対峙すれば、どんな困難な状況下でも圧倒的な突破力を発揮した田中角栄も、電話越しでは、そのパワーが百分の一に減殺された。イライラが募り、角栄は海外で精神不安定状態に陥り、それがますます状況を悪化させた。
  • 「改革には痛みをともないます」という掛け声をかければ、デフレ、ゼロ金利、リストラ、失業の増大という三重苦、四重苦を強いられている国民が、みんな「改革のために」と思って我慢してしまうというこの従順な国民たち!


イラク問題

  • 日本はこの60年間、同胞の血を流さなかっただけでなく、日本国の名において他国の国民を一人も殺さないできた。世界の主要国で、そのような実績(誰も殺さず誰も殺されない不戦国家であり続けた事)を残す事ができた国は、日本の他にはない。憲法第9条があった故に、日本は名実ともに平和国家の名にふさわしい実績を持つ国になりえたのである。
  • 一般には、あの憲法は、はじめから終わりまで、マッカーサーが日本に押し付けたマッカーサー憲法であるというのが、改憲論者の主張だが、堤氏は、憲法第9条だけは違うという。幣原が、頭をふりしぼった大芝居で、マッカーサーをまんまとはめた「救国のトリック」だったというのだ。


あとがきから

  • 今の時代を本当にとらえるためには、ここに書いてきたようなタイムスケール(50年以上を考えに入れて)、空間スケールで(世界全体の相互関係を視野に入れて)考えていかねばならないのだということを最後にいま一度強調しておこう。