数学ガール

数学ガール (数学ガールシリーズ 1)

数学ガール (数学ガールシリーズ 1)

「そう?それなら、何個まで見ればよい?数列が無限に続くとしたら、何個まで見れば残りがわかる?」(p.9)


読み物としての数学。数学が得意か不得意かと聞かれたら、大学入試センター試験の数学で平均点を取るくらいの実力だと答えるけれど、数学が好きか嫌いかと聞かれたら、それは紛れも無く好きだと答える。もしずっと数学をやっていられるならばそれは素敵な(時には辛い)人生だと思うけれど、いまそうしていないということは、僕の数学に対する興味は、結局そのくらいなのだなとも思う。それでもやはり、数学の歴史を紐解くのは何より増して面白いものがある。
数学ガール」に出てくる問題は僕に取っては難しい。ノートとペンを片手に読んだらどれだけ面白いかと思うけれど、悲しくも日本の会社でいわゆるサラリーマンをやっている僕には、残念ながらそんな時間は無い。数学には時間が必要なのだ。

「うん、時間はかかる。とてもかかる。でも、それは、あたりまえだ。考えてごらん。数式の背後には歴史がある。数式を読むとき、僕たちは無数の数学者と格闘しているんだ。理解するのに時間がかかるのは当然だ。一つの式展開のあいだに、僕たちは何百年もの時を駆け抜ける。数式に向かう時、僕たちは誰でも小さな数学者だ。(p.37)

そうなのだ。やはり数学には時間がかかるらしい。

「好きなことをしっかり追い求めていくと、本物と偽物を見分ける力もついてくる。いつも大声を出している生徒や、賢い振りをする生徒がいる。きとそういう人たちは、自己主張が好きで、プライドが大事なんだ。でも、自分の頭を使って考える習慣があって、本物の味わいを知っているなら、そんな自己主張はいらない。大声を出しても漸化式は解けない。賢いふりをしても方程式は解けない。誰からどう思われようと、誰からなんと言われようと、自分で納得するまで考える。それが大事だと僕は思っている。好きな事を追い求め、本物を追い求めていくのが――(p.96)

本編の数学問題に関係ないけど、ここのフレーズが好きだ。何か一つ突き詰めていくと色々な物だとか、人の見え方が変わってくる。大袈裟に言うと世界の見え方が変わってくる。自分がいる世界にはまだ上の世界があったのだと気付き、そんなパラダイムシフトがあることを知れば、自分が知っている事なんてまだまだ何も無いのに等しいということを知る事ができる。そういうことに気がついていない(もしくは意地でも知ろうとしない)人と話をするのはとても退屈だし、自分がそう思われるのは嫌だ。そうならないために、毎日少しずつでも世界を知っていく努力をしていかなくちゃいけないのだな。