The Goal 企業の究極の目的とは何か

作者:エリヤフ・ゴールドラット
出版社:ダイヤモンド社
発売日:2001/5/17

ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か

ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か

ビジネス書を読む人ならば、一度はどこかで目にしたことがあるであろう、印象的なタイトルの、黄色くて分厚い本。約500ページ程のボリュームだが、翻訳も綺麗で、スラスラと読むことが出来た。基本的には小説であるが、ストーリーを通してTOC全体最適化)を学ぶことができる。参考書で勉強するよりもよほど楽しく、しかも頭に残る形で、全体最適化というものを理解できるのではないかと思った。


内容としても、工場閉鎖を迫られる中、主人公のアレックスが恩師であるジョナの助言を受けながら、工場のメンバーと課題を解決していく姿が、非常にエキサイティングに描かれていて面白い。また、妻のジュリーとの関係を修復していく過程も、工場の改善プロセスと重なって見え、大変重要な要素となっている。


ITと対比して考えてみると、工場の機械を有効活用していくプロセスというのは、いかに質の高いIT投資を行っていくかということに通じるものがある。
IT投資においては、ただ効率化だけを見据えてシステムを導入してしまうと、逆に運用コストが今までの予算を上回ってしまうということもあり得る。工場の機械も同じであり、ただラインに機械を投入するだけでは、従業員のアイドルタイムが増えたり、逆に運用のためのコストがかかってしまったり、ということがある。
この問題を解決するためには、やはり実際の業務状態に合致させて、確実に業務効率を上げ利益が追及できるようにする必要がある。本書ではボトルネックを探すという形で、この課題の解決を行っている。


全体としては、やはりアレックス達工場のメンバーが、ジョナの質問に従って、改善の策を話し合う過程が一番面白い。ロジックを突き詰め、反論し、ブラッシュアップしていく過程を見ることによって、全体最適の手法が自然と頭に入ってくるような構造になっている点が、素晴らしい。

フレーズ

淡々と物語が進む傾向があって、珍しくあまり線を引かなかった。

  • もしこの工場を救いたければ、全てを当たり前だと考えてはいけない。物事の基本を注意深く観察し、よく考えなければならない。
  • 「みなさん知っていると思いますが、この工場の業績はここしばらくの間思わしくありません。皆さんに理解してもらいたいのは、これから、自分達の力でそれを変えていかなければいけないということです。」
  • 「私たちが探し求めているものは、いったい何なんだ。3つの簡単な質問に答えることの出来る能力じゃないのか。『何を変える』、『何に変える』、それから『どうやって変える』かだ。」

これらの点は、工場だけに当てはまる改善点ではなく、仕事をする以上は常に考えなければならないこと思った。


以上