ロマンチックな科学者―世界に輝く日本の生物科学者たち
- 作者: 井川洋二
- 出版社/メーカー: 羊土社
- 発売日: 1992/07/01
- メディア: 単行本
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僕は生命科学なんて全く専門外ですが、科学が良いなと思うのは一つの研究分野を深堀していく学問だからですかね。大人になって強い人というのは、何かひとつのことを積み重ねていった人だと思います。これは生命科学だけじゃなくて他の分野についても言える事ですが、そうした積み重ねの一番分かりやすい形が科学者の人たちなんじゃないかなと思います。僕は本当に科学からっきしで、高校の時に物理学で挫折しましたが。。第一線の科学者の人たちが自分達の経験や考えを自由に書いている感じがためになったのでよかった。
memo
フレーズ
- 「科学者の中にも将軍と兵士がいる。優れた兵士が必ずしも将軍にならない。将軍になるのはロマンチックだ」ーマックス・デルブリュク
- 「茶色の土に降りかかる雪は最初の間はとけてしまい、積もったりしません。しかし、どんどん雪が降り続ければ、やがて茶色の土は薄く白い雪に覆われます。一旦、その状態になれば、雪が積もるのにそれほど時間はかからない」
- 「人がおもしろいと言うことや、今おもしろいことはやるな、自分で考えたテーマをおもしろくせよ」ー江上不二夫
新しいことをする
- コウモリやフクロウのように特殊な動物を使うと、主流からはみ出たものとして無視されるし、発見した事が一般に通じないという偏見をもたれる。
- 新しい事をする時には、知的及び社会的に勇気をもつことが一番大切である。夢と勇気の持ち主がノン源のあらゆる活動分野で将軍になるのであろう。
科学発展の環境と日本の影響力
- 科学技術の発展には、社会的環境と、科学や文芸を愛し、理解する人々の感性と、そうした完成を備えた人々の集団・人脈が、その社会に根付いて生活し、発言力をもっていることが、何といっても重要なファクターであろう。
研究の歴史的進展
- 約20年前に掲げた二つの目標の中で、生物の多様化の分子機構の解明は、そのほんの一部であるコドンの多様化に目鼻をつけるとことにまでこぎ着けた。やっと無から有、ナンセンスがセンスに変わったところである。大進化をやりたかったが、残念ながら時間切れになってしまった。しかし、生物多様化の分子的メカニズムはここ数年、多くの研究者がその重要性に気付き、いろいろな角度から数々の面白い研究が進められているのでそれに期待しよう。
- 日本の小学校、中学校では主として事実を教え込むが、フランスでは論理の進め方を繰り返し教え、大変大きな違いがある。てっとり早く学力をつけるには日本の教育の方が良いが、研究者を育てるには問題があると考えられる。そしてこのような教育の相違が研究を進める上にも現れることがある。
- "一階建ての知性"は事実を集めるだけのファクト・コレクターで、事実の背後にあるものを見ようとしない。"二階建ての知性"は事実を比較したり、一般化したりすることを試みる。"三階建ての知性"は天窓付きでイマジネーションがあり、理論を完成する能力をもっている。
プレゼンテーション・コミュニケーション
- デルブリュックの教え
- 聴衆は完全に無知であると思え。
- 聴衆は高度な知性をもつと考えよ。
- 聴衆がおのおの自身より一段上のレベルまで理解できるようにせよ(堀田の教え)
日本の科学技術の影響力
- 米国はNIHから1.3兆円を超える研究費を生命科学に支出している。しかも年々9%近い伸びを示しているのである。
- 我が国の基礎科学への政府支出はGNPの約0.5%で、先進国が全て1%以上であるのに比べて、異常に少ないことは前から指摘されていたが、我が国の財政にはもはや余裕はなくなったのである。
- 日本の基礎科学の水準は、人口比から言えば、米国、西欧諸国に比肩こそすれ、遜色は全くないと思う。ところが、日本の科学が世界に及ぼす影響力はどうかというと、誠に微々たるものと言わざるを得ない。問題は、実力の有無にあるのではなくて、なぜ実力があるにも関わらず、影響力がほとんど皆無に近いのかというところにあるのである。
- 実験の結果だけでは、運が良ければノーベル賞はもらえるかもしれないが、国際的な影響力を得て、その分野の方向を左右できるようになることはまずない。さらに、講演をして聴衆の反応を聴かないと、自分自身の研究の発展方向を間違える危険がある。
科学と外国語
- 日本はすでに実力ある世界有数の大国であり、基礎科学の成果も着々と上がってきている。実力に相当した影響力を得る為、つまり自己の成果を宣伝するために外国語を学ぶわけである。したがって一応通じる程度では意味を為さない。