「脳を鍛えるには運動しかない!―最新科学でわかった脳細胞の増やし方」を読むと世界は幸せになれるかもしれない

健康維持のために運動をしよう!と思ってもなかなかできない…。
毎日ランニングをしようとしても続かない。ジムに行っても三日坊主になってしまう。
こうした事は、誰もが一度は抱えたことのある悩みだと思います。
しかし、運動とは一概に健康管理という言葉だけで片付けてしまうには勿体無い、とても素敵な効果があるのです。
これまで運動しようと考えながら、なかなか実行できなかったり、継続できなかったりしたそんな方に。
運動の産み出す素敵な効用を学んで、明日から体を動かしてみませんか。
そんな本。
皇居ランの時に本の話をしたらもんざさんがブログに書いてくれた。感謝。

脳を鍛えるには運動しかない!  最新科学でわかった脳細胞の増やし方

脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方

  • 作者: ジョン J.レイティ,エリックヘイガーマン,John J. Ratey,Eric Hagerman,野中香方子
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2009/03/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • 購入: 31人 クリック: 757回
  • この商品を含むブログ (75件) を見る

運動についての根本的な考え方ーライフスタイルとしての運動ー

いわゆる運動というと、サッカーであり、バスケットであり、ランニングであり、テニスであり、水泳であったりする。
そしてぼくは、運動はあくまでも体を動かす一活動であり、日常生活というOSにオプションとして付加する、ソフトウェアのようなイメージを持っていた。
また、運動をすることは体にとって良い影響をもたらしてくれることは想像ができても、それ以外に自分に対してどのような影響を持つのかということを、あまり分かっていなかった。
ぼくも最近良くランニングをするのだが、実は運動というものを一つの健康サプリメントとして捉えることは、余りにも勿体ない事だったのだ。
運動は、体に良い影響を与えるだけではなく、脳や精神にも良い影響を与えるということが解明されてきた。
例えば、ストレス抑制効果があったり、うつの防止効果があること、また自制能力が向上するといった、様々な運動の脳に対する効果が明らかになってきているのだ。
つまり、運動について考えると言う事は、自分の健康について考えるということであり、運動を通して自分の健康を観察し、管理する方法を学べば、その知識は生涯の役に立つようになり、より長く幸せな人生を送ることが出来るのである。
すなわち、運動について考えるということは、すなわち、自分のこれからのライフスタイルを考えるということなのである。

なぜ運動は脳に良い影響を与えるのか?

様々なテクノロジーの発達により、何百年も前の生活様式に比べて大きく姿を変えてしまったものが運動だ。
かつて世界には車も無ければ電車も無く、セグウェイも、インターネットもなく、iphoneも無く、さらに遡れば食料を手に入れることも、一つの生活目的であった時代が存在した。
そのように運動と密着した生活様式を基盤に進化を続けてきた僕たちにとって、運動をする事によって体と脳を本来あるべき状態に保つという事は、歴史的に導かれる解でもあるのだ。

わたしたちの遺伝子には狩猟採集の行動様式がしっかり組み込まれていて、脳がそれをつかさどるようになっている。従って、その活動をやめてしまうと、10万年以上に渡って調整されてきたデリケートな生物学的バランスを壊す事になる。簡単に言ってしまえば、体と脳をベストの状態に保ちたいなら、この歴史の長い代謝システムをせっせと使うべきなのだ。(p.312)

また、ランニングをすることによって、プロザックリタリンを服用した時のように、運動がそれらの薬と同じく、神経伝達物質の量を増やす。
運動は脳の中の神経伝達物質と、そのほかの神経化学物質のバランスを保っているのである。

運動がもたらす脳への影響についてー科学的事実と効果ー

運動は、僕たちが考えている以上に、非常に多くの脳・精神の問題に対する有効な解決手段となる。
下記の4点について、脳への影響という観点で説明を加える。

  1. ストレス対処効果
  2. うつに対する効果
  3. やる気に関する効果
  4. 自己規制能力の強化


1.ストレス対処効果

そもそもストレスというものは、本人がそれに対してどのように対処するかによって、脳に対する影響度合いが変わってくる。
ひたすら受け身であったり、全く逃げ道がなかったりすると、ストレスは有害なものになる。
しかし、ストレスに対して能動的に対処すれば、その状態から脱出する事が出来るのだ。
本能的な反応を別にすれば、ストレスの作用はある程度コントロールできるものなのである。

また、予防的にストレスに対処する効果だけではなく、運動をする事によって、悪影響を逆転させる事も可能である。

微笑細胞レベルから心理レベルまで、運動は慢性ストレスの悪影響を妨げるだけではない。悪影響を逆転させる事も出来るのだ。複数の研究により、慢性のストレスにさらされているラットを運動させると、縮んでいた海馬が元の大きさに回復する事が分かっている。運動が人間の思考や感情を変化させる仕組みは、ドーナツや薬やワインよりよほど効果的だ。泳いだあと、もしくは早歩きしただけでも、ストレスが減ったように感じるなら、それは本当にストレスが減ったからなのだ。(p.101)

このように運動をする事によって、慢性的なストレスを減らしていく事が可能である。

加えて、運動は気持ちを落ち着かせる効果も持っている。
運動すると体の筋肉の張力が緩むので、脳に不安をフィードバックする流れが断ち切られる。
体の方が落ち着いていれば、脳は心配しにくくなるのだ。
また、運動によって増えた脳由来神経栄養因子(BDNF)もセロトニンを増やし、自らを落ち着かせ、安心感を高める効果を持っている。


2.うつに対する効果

うつに対しても、運動をすることが多大な影響を与えることが実証されている。
例えば、週に最低二、三回運動している人は、運動を殆どしない、もしくは全くしない人に比べて、うつ、怒り、ストレス、「ひねくれたものの見方」がきわめて少ないことが明らかになっているのだ。
また、2003年に発表されたコロンビア大学疫学科による8098人を対象とした調査では、運動量とうつになりやすさに反比例の関係を見出している。

運動は、セロトニンドーパミンノルアドレナリン、BDNF、VEGFといった、これまで挙げたすべての化学物質を調整して、わたしたちの自己概念を変化させる。とは言っても、抗うつ剤とは違って、それらの化学物質のどれかを選んで作用する訳ではない。運動は脳全体の化学反応を調節して、信号を正常に戻すのだ。そうやって前頭前野をがんじがらめの状態から解放して、好ましい情報を記憶できるようにし、うつの悲観的な思考回路から脳が抜け出せるようにする。(p.171)

うつの傾向があるひとはそもそも運動という思考へ向かわないと聞く事があるが、医療的な問題として、こうした取り組みはもっと広がっていったら良いと思う。


3.やる気に関する効果

ランニングしていて、実感が湧くのがこの「やる気」の向上効果である。
訳も分からずただ走っているだけで、やる気が出てくるという感覚はないだろうか。

運動はドーパミンを放出させ、ドーパミンは気持ちを前向きにし、幸福感を高め、注意システムを活性化させる。
つまり、ドーパミンはやる気と集中力を総括しているのだ。
習慣的に運動するようになると、脳のドーパミン貯蔵量が増えるだけでなく、ドーパミン受容体を作る酵母が生成され、脳の「報酬中枢」にある受容体そのものが多くなる。
それで、何かを成し遂げたときにより強い満足感を得られるようになるのだ。
ランニングクラブうなぎいぬさんなんかを見ているとやる気をすごく感じる。やる気系女子。

また、運動はドーパミンー意欲と運動システムの要となる神経伝達物質ーの自然減少を予防する。
体を動かすと、ドーパミンニューロンうしの繋がりが強められ、自然とやる気が増す。
ゴルフやテニスのようなスポーツが非常に優れているのは、自分を客観的に評価することと、上達しようとする意欲が求められるからである。


4.自己規制能力の強化

「やる気」の向上効果以上に、運動によって最も効果の現れを感じるのが、自己規制能力の強化である。
毎日自分を規律して運動を続ける事で、自然と自分に対するの規制能力が向上していく。
体を動かし、主体的に新たな目的に挑戦し、それを達成できれば、自分をコントロールできると言う自信が生まれ、それは生活の他の面にも広がっていくのだ。

また、自己規制能力は、筋肉のように衰えもすれば鍛え直す事も出来る。
そして、それは使えば使う程強くなる。
運動は、僕たちが持つ自己規制能力の最良の形なのである。

実際にランニングしていて思うこと

運動理論だけだと物足りないので、実際の感覚を交えて、どれだけの効果があるのかということにも触れておく。
ぼくはRunKeeperを使ってランニングの記録を取っている。
無料のくせにかなりの高性能でお勧めなアプリ。
導入についてはこの辺りを参照して頂くと良いと思う。


↑日々のランニングの記録を一覧できる。見れば分かるようにかなりばらばらな距離を走っていて不安になってくる。


↑一回のランで1分毎にペースを記録してくれる。ラップタイムなどもこの画面で確認できる。

僕の感じているランニングの効果

そして、僕が走っていて変化を感じた点を以下に書いておく。

  • 走る習慣をつけると毎日自然と気分が良くなって前向きになる

ぼくは元々、前向きであっても後ろ向きであってもとりあえず体の向く方へ進んでいくというスタンスで生きているので、すごく落ち込むとかは無い方なのだが、走り始めるようになって、迷惑ないくらい前向きさが増した。毎日楽しく過ごせるというのはとても重要な事ですよ。

  • 自制心がつく。そして何故かアルコールを断った。

日々誰に言われる事も無く一人で走ると言う事を繰り返していくと、とにかく自制心が付く。何事に対しても良い方向に自制心が働くようになる。あまり関係無いのだが、全てにおいて効率が悪いと言う事で、無駄なアルコールを断つようになった。

朝でも夜でも構わないのだが、毎日継続して走ろうとすると、仕事との折り合いというのが非常に重要な問題となってくる。習慣を一つ増やすと言う事は、毎日の時間配分全体に影響してくる。ランニングの時間を組み込もうものなら、仕事もそれ以外のプライベートも効率的にこなしていかないと時間が無くなる。

  • 食欲が増した!

ぼくは元々小食な方なので、吉野家の牛丼などは並でかなりお腹いっぱい満足していたのだが、最近割と食べる量が増えた。走ってばかりで食事量が変わらないと栄養不足になりそうなので、結果的に以前よりも食事量が増えた。

参考:ランニング以上の複雑な運動の効果について

基本的に僕がやっている運動と言うのはランニングだけであるが、脳への影響を考える時に、さらに一歩進んだ効果を得る方法がある。
すなわち、ランニング以上に複雑な運動技能の習得である。
例えば、ヨガ、バレエ、体操、フィギュアスケートピラティス、空手、ダンスなどが挙げられる。
これらは全て、学ばなければ身に付かないため、どれも脳を刺激する。
始めは少々ぎこちなくても格好悪くても、小脳と大脳基底核前頭前野を繋いでいる回路がスムーズに流れるようになるにつれて、動きは正確になっていく。
何度も繰り返す事でニューロンの軸索の周りの骨鞘も厚くなっていき、信号の質や伝達速度が向上し、回路はより効率的になっていくのだ。

フレーズ

色々書いたけれども、運動と脳の関係についての素敵過ぎるフレーズを添えておく。

人生において成功するために、神は人にふたつの手段を与えた。
教育と運動である。
しかし、前者によって魂を鍛え、後者によって体を鍛えよ、ということではない。
その両方で、魂と体の両方を鍛えよ、というのが神の教えだ。
この二つの手段によって、人は完璧な存在となる。ープラトン

この言葉を胸に刻み進めば、きっと世界は幸せになれるに違いない。